無料ブログはココログ

« 中国からの冊封使と尖閣諸島 | トップページ | 「ん」ではじまる沖縄語の不思議 »

2010年10月 1日 (金)

モーアシビ゙に罰金が科せらた

 若者が夜、野原に出かけて、歌って踊り楽しんだモーアシビ(毛遊び)。沖縄では、戦後の1950年代まであったようだ。若者にとっては、ほかに娯楽がない時代、なによりの娯楽であり、若い男女の愛の出会いの場であり、青春の発露であった。

 「朝から晩まで働き通しでね。なんにも楽しみってないから、日が暮れるとさっそく三線は、親や兄たちのものを拝借して、三線かついでモーアシビーに行くからね」「夜を明かすときもあったから、そう、また翌日は砂糖小屋に直行だし、そのまま夜が明けないうちに、そのまま砂糖仕事に行ってね」。これは、うるま市山城(やまぐしく)の様子である(山城正夫著『シマの民俗(下巻)』)。当時の雰囲気がよくわかる。

 モーアシビの相手や場所は、住んでいるシマ(地域)を超えて、他の町や村まで出かけたそうで、このうるま市山城でも、遠くは読谷山(いまの読谷村)まで遠征したそうだ。三線だけでなく、男は酒をトックリに入れて持ちより、飲みながら、歌い踊った。相思相愛のカップルが生まれると、ニービチ(結婚)して夫婦になったという。

 モーアシビならではの歌い方に「かき歌」がある。民謡の歌詞は通常、字数が8886の形式の琉歌である。誰かが、何かの旋律にのせて「88」(上句)を歌うと、他の者が「86」(下句)を歌う。こうして歌をどんどん歌い継いでいったという。即興で歌をつくり歌い続けるのだからスゴイ。掛け合いの対話のようになるので、それがまた楽しいのだろう。

 ところで、モーアシビをほかのシマの者とすると罰金がかけられたという。この山城では、「六ケ札」と呼ばれる罰金があり、1日1貫(2銭)払わされたという。当時鉛筆1本1銭の時代である。夜、モーアシビをしている者を捕えても、自分のシマの者はかけず、他のシマの者にかけたという。この罰金は、1899年(明治32)に尋常小学校校長が、風紀取り締まりのために出したといわれる。「しかし、フダを恐れ、罰金の支払いに心を痛めたが、若者の溢れる情熱は止めることが出来ず、夜な夜な遊びに行った」そうである(同書)。

 罰金は、各区長が徴収したけれど「その使途は不明」(同書)だとのこと。若者の反感を買ったというが、当然だろう。

 なぜ、モーアシビを取り締まろうとするのだろう。昔は、若者が夜が明けるまで遊びまわると、仕事に差し支える、という思惑があったとも聞く。また、男女の結婚は、他の間切(今の市町村)や字の者とはさせないという決まりがあったそうだ。ほかのシマの者と夜遊びすると、他のシマの者との結婚につながるから、避けようとしたのかもしれない。この山城では、モーアシビは風紀の乱れにつながるから、「風紀取り締まり」というのが一番の名目になっていた。でも、それが理由なら、他のシマの者とのモーアシビだけでなく、モーアシビそのものを禁じなければ意味がないだろう。

 まあ、古今東西、若い男女の遊びと出会いはだれも止められない。青春そのものだからだ。若者の遊びや恋愛を制限したり禁じても、それは「禁酒法」と同じ、結局は破られるだけだろう。実際に、モーアシビはいくら罰金を科しても、止められない。戦後まで若者にとっての最大の楽しみだったようだ。

« 中国からの冊封使と尖閣諸島 | トップページ | 「ん」ではじまる沖縄語の不思議 »

コメント

「沖縄の歌と踊り」で、琉球王府の「モウアシビ」禁止令が出て、シマの役人が取り締まりに夜な夜な巡回してまわるんだけど、実際にはモウアシビがどんなものか知らなくて、実際のを見たら楽しくて大いに奨励したっていう演目がありましたね。王府は夜中まで遊んでいたら、翌日の仕事にさしさわりがあるから禁止するという、若者はモウアシビがなくて仕事に精が出るかと反発する。北村さんの踊りが上手だったんで楽しかったです。

モーアシビ禁止令の話は、NHKで放送された沖縄芝居だったけど、題名は忘れちゃった。風刺がきいていて、なかなか面白かったですね。やっぱり歌と踊りは、日ごろの仕事の疲れをいやし、ストレスを発散させるので、いわば活力の源になる。遊びも抑えて働くことばかり強いては、元気も出ない。それに、若い男女の出会い、恋を場をなくしては、若者の生きる力、喜びも削ぐことになるものね。
 いまはまあ、娯楽はたくさんあるけれど、でもやっぱり沖縄では、お祭りと芸能、そしてエイサーは、若者にとって大きな楽しみであり、出合いの場、婚活の場でもある。そこには、昔も今も変わらないものがあるね。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モーアシビ゙に罰金が科せらた:

« 中国からの冊封使と尖閣諸島 | トップページ | 「ん」ではじまる沖縄語の不思議 »

最近のトラックバック

2021年11月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30