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2011年1月13日 (木)

80年ぶりに出版された「板垣退助君伝記」

 これは「レキオ」とも「島唄」とも無関係。番外編である。013
 宇田友猪著、公文豪校訂の『板垣退助君伝記』(原書房)が出版され、沖縄県立図書館にも入った。全4巻の大著である。労作を出版にこぎつけた校訂者が、知人なので、あえてふれておきたい。
 右の板垣退助の肖像は、同書から。
 著者の宇田は、土佐藩士の3男で、自由民権運動の昂揚期に青春をすごした。高知の土曜新聞はじめいくつかの新聞社で記者をしたが、自由民権運動の指導者・板垣退助に終生師事した。板垣監修の名著『自由党史』も原著者は宇田である。今回の大著も「板垣伝であると同時に維新革命史、政党沿革史、立憲政体史そのものである」という。
 大著であり、とても容易に読み切れそうにない。なのに、ここで紹介しようと思ったのは、この本書が日の目を見たことが、とても重要な意義を持つと思ったからである。
 というのは、この宇田著の板垣伝の原稿が存在することは、一部の人には知られていた。しかし、原稿が複数の人物によって私蔵されていて、公的機関に寄贈されるまでは所在も不明だった。通読したものは、ほとんどいなかったという。
 本書は、大正13年(1924年)から執筆を開始し、7年をかけて、隈板内閣(第一次大隈内閣)成立直前までを脱稿したところで、宇田は63歳で惜しくも死去した。「何卒板垣拍伝記を完全な立派なものにして世に出して下さい」と遺言した。しかし、残念ながら、実行されずに終わった。それ以来、宇田が「全身全霊を捧げた完成した唯一最高の生産物」といわれる5000枚を超える毛筆の原稿は、80年間も活字にならないまま、眠っていたのだ。そして近年では、その存在すら忘れ去られていたという。
 本書の編集は、2003年11月から、高知県立歴史民俗資料館や東京・渋谷区の郷土資料室にある原稿をすべて写真撮影することから始まった。
 「原稿入力、校正、校訂を経て完成するまでにほぼ3年を費やした」という。気の遠くなるような地道な作業である。校訂者は「宇田友猪のこの大労作が、今後の板垣退助や明治史研究の進展に資することができれば、編者のこの間の苦労は十分に報われる」とのべている。
 5000枚を超える原稿が、一枚も欠けることなく保存されていたこと自体、「奇跡的」だと校訂者がいう。同時に、土佐の自由民権運動を研究する校訂者が、この原稿の存在とその価値に着目し、これを出版する意欲と努力を惜しまなかったからこそ、出版までこぎつけることができたのだろう。もともと出版され、絶版となっていたものを復刻することはよくあることだ。でも、それとはまったく違う。
 著者が遺言で出版を切望しながら、出版できなかったことには、それなりの事情や困難があっただろう。さまざまな困難を乗り越えて、出版に至ったのは2009年9月からだ。執筆から出版までの事情そのものが、一つの物語をなしている。出版の歴史をみても、かなれ希有なことではないだろうか。校訂者の熱意の産物である。「死せる宇田、生ける校訂者を走らせる」という気がしてならない。宇田も出版が希望より遅れたとはいえ、遺言が80年後に実現したことを、グソー(あの世)から感謝しているのではないだろうか。
 
 

 
 

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コメント

初めてコメント失礼します。
沖縄県立図書館に「板垣退助君伝」をリクエストした者です。
現在発行されているどの板垣関係書籍より詳しく丁寧で、
とても興味深く面白くて、少しずつ拝読しております。
古い書籍は読みなれていないのですが、難解な漢字に仮名がふられていたり、
各章ごとにわかりやすく編集されていて、非常に読みやすく感じました。
当時の膨大な資料をかき集めて、ここまで編集するのは大変だっただろうと思っていましたが、記事を拝見して、そのご苦労を感じて感慨深くなりました。
お知り合いの校訂の方に深く感謝を申し上げたい気持です。
出版にかけてこのような苦労やストーリーがあったと思うと、改めてこの本の重みを感じます。
貴重な記事ありがとうございました。

shirさん。コメントありがとうございます。
この本をリクエストしていただいたおかげで、沖縄でも読めるのはありがたいですね。
校訂した知人の仕事をこのように評価していただけると、知人もやりがいがあるでしょう。

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