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2011年3月25日 (金)

石垣島の官庁・蔵元には絵師がいた

 石垣島の昔の姿などの資料を見ていると、庶民の風俗など描いた絵をよく見る。前に、人間の頭割で税金をかける「人頭税」について、「人頭税哀歌」を書いた時、女性が貢布を織る機織りの図絵を勝手に彩色して使わせてもらったことがある(右)。Photo_3

 八重山の人にとっては、常識だろうが、素人の私にとっては、まだ誰が描いた絵なのか、わからないままだった。石垣島に行って、八重山博物館の立ち寄った際、これらの風俗の絵に出合った。それは、琉球王府の時代から、八重山の政治をつかさどる蔵元政庁に、絵師がいて、かれらが描いたものだった。「八重山の蔵元にお抱えの絵師がいたとは!」と驚いた。
 博物館には、八重山風俗図絵が展示されていた。庶民の日常の様子、風俗や行事など描かれていて、とても興味深かった。
 なぜ、蔵元に絵師がいたのだろうか? 博物館にも多少説明があった。別途、八重山の民俗、古謡などに詳しい喜舎場永珣氏著『八重山民俗誌下』に詳しい解説があったので、よく分かった。これから、少し紹介したい。004

 蔵元には、常時絵師が2人ずつ勤務していた。絵師になるには、試験があった。この試験は、首里王府から派遣された役人の在番奉行と同在番筆者(2人)の3人と、三つの間切(今の町村)の頭3人の計6人の最高行政官等が出題して決めた、この試験に合格した優秀な者だけが絵師に採用された。採用者で優秀な者はさらに、首里王府へと稽古のため研修派遣された。
 2人の絵師は、常時蔵元詰めの役人として、平日はもっぱら絵の稽古に精を出した。
 絵師の任務は何か。絵師という特殊技能をもった行政上の一役人だった。とくに、重んじられたのは、在番奉行や頭などが蔵元管内の005_2 各島村を巡回する旅に立つ、いわゆる「親廻り」の時に随行員の一員として行動をともにすることだった。
 その最も重要な任務の一つが、八重山に来島する西洋などの異国船の報告資料の作成があった。公文書の文章は蔵元の筆者などが取り扱ったが、絵師は必ず通事(通訳)とともに、漂流漂着の難破船の船着き場にかけつけ、これら異国船の船形の実写はもとより、その他異国人の肖像、風俗などを正確に写し取って、首里王府へ報告したという。
 写真のない時代、いわば絵が写真代わりになったのだろう。首里王府でも、報告分と合わせて、絵を見れば様子が分かりやすかったのだろう。

 絵師には、もう一つ大事な任務があった。

006 人頭税で、女性には貢布の上納が義務付けられていた。八重山上布が有名である。布を織るのに、蔵元から図柄を示して織らした。絵師にその図柄も描かせたそうだ。
 「人頭税の上納貢布の各村へ配布する図柄の作成、また御嶽(拝所)仏閣などにおける壁画も殆んど彼等絵師の筆によるものが多い」。

 絵師は、公的な絵画に関する一切の任務を担っていたという。

 蔵元政庁は、明治30年(1897)に廃庁となったが、最後の絵師は、宮良安宣といい、明治24年から7年間務めた。

009_2  ここに紹介した 「八重山風俗図絵」は、喜舎場氏の『八重山民俗誌下』に掲載されているものの一部をアップした。この「風俗図絵」は、蔵元の最後の絵師であった宮良安宣の画稿を中心とするものだが、古くは、200年前のものも含まれているようだ。「当時の生活や風俗を知るうえで極めて貴重な史料的価値を持つ」と指摘している。010_2
 

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コメント

絵師は試験を受けないとなれなかったんですか。では、出題する方も絵の心得がないといけませんね。絵師って給料もらえたんですか?私も絵描くの好きだったから、仕事が絵の精進してればいいっていうのだったら、絵が好きな人はたまんないでしょうねえ。でも細大漏らさず描き移しておかねばならないというのも、大変な仕事ではあったでしょうね。ヨーロッパには宮廷画家がいましたけど、古琉球には蔵元画家がいたんですね。

 絵師と言っても採用されれば、役人の一人ですかr、当然給料に当たるものをもらえたでしょう。好きな絵で、役人になれて、好きな絵を仕事にできるのだから、満足でしょう。ヨーロッパでは、スペインのベラスクスなど宮廷画家がたくさんいましたね。任務はちょっと違うけれど、小さな島の蔵元でも絵師が2人もいたとは、驚きでした。

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