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2011年4月 8日 (金)

数字の古い数え方が残る沖縄民謡

 沖縄民謡には、いろんな数の数え方が出てくる。沖縄では、1,2、3は、ティーチ、ターチ、ミーチというように数える。沖縄民謡は、恋歌が多いが、よく「二人」の男女の関係が歌われる。「二人」は「タイ」と呼ぶ。なれるまでは、なかなかなじめなかった。
 「月夜の恋」という唄では「♪二人が待ち所⋯⋯」と出てくる。「タイガマチドゥクル」と歌う。「♪二人や縁結で戻る嬉さ」は「タイヤインムシデ ムドゥルウリサ」と歌う。これは恐らく「フタリ→フタイ→タイ」と変化したのだろう。
 「一人」は「ヒチュイ」と言う。「白雲節」だと「♪一人淋々とぅ眺む白雲ん」は「ヒチュイサビサビトゥ ナガムシラクムン」と歌う。
 「三人」は「ミッチャイ」という。女性歌手3人で歌う唄に「女三人はなじゃかい」というヒット曲がある。「イナグミッチャイハナジャカイ」と歌う。 

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 写真は「さんしんの日」に「女三人はなざかい」 を歌った女性歌手3人(RBCテレビから)
 これは、大和で、ヒトツ、フタツ、ミッツと数えるのがなまったものだ。日本では、原日本語に由来する固有の和語の数え方だという。まだ使われているが、通常は「イチ、ニイ、サン、シイ⋯⋯」と数える。これは、中国から漢語とともに持ち込まれて、それが日本語化したものだ。こちらが主流になっている。まあ沖縄だけ、古い数え方が残っているということではない。
 問題は、10を超える数字だ。いま、日本では普通、12,13は「ジュウニ、ジュウサン」と数える。でも、これは漢語の数え方である。もともと日本の数え方は、10をl超えると、10に付け加える形で、13だと「トウ・アマリ・ミッツ」、20になれば「ハタチ」、30は「ミソジ」、40は「ヨソジ」と数えた。でも、これはもう大和では使われなくなった。「ハタチ」「ミソジ」「ヨソジ」なども年齢を表す数え方になった。
 050 ところが、沖縄ではこの古い原日本語に由来する数え方が残っている。とくに八重山、宮古などである。八重山の「月ぬかいしゃ節」は、「♪月ぬかいしゃ一〇日・三日(トウカ・ミカ) 女童(ミヤラビ)かいしゃ一七(トウナナツィ)」と歌う。「月が美しいのは13夜だよ 若い女性が美しいのは17歳だよ」という意味である。
 宮古民謡の「豆が花」(マミガパナ)では、「♪年数(ゆ)みば一七歳(トウナナツ)よー 肌見りば今童(ナマヤラビ)よー」と歌う。「娘の年を数えればまだ17歳だよ 肌を見ればまだ子どもではないか」という意味である。  写真は「さんしんの日」に八重山民謡を歌う宮良康正さん(RBCテレビ)。
 この唄は、人頭税を課せられた時代、宮古上布を織る織女の乙女を見染めた役人が、自分のものにしようと親に要求するが、親はこれを拒否するという気高い名曲である。
 数の古い数え方が沖縄に残っていることを、指摘したのは、沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷(イハフユウ)氏である。『古琉球』では、次のように指摘している。
 「日本の数詞には固有ののと支那(中国)のと二通りあって、前者は殆んど後者に圧倒されたが、琉球に於ても同様の現象がある。しかし久しく文化の光に浴しなかった宮古、八重山には今なお固有ののが遺っていて、日本固有の数詞に髣髴(ホウフツ)たるものがある。国語で古くはトヲカアマリヒトヒ(十一日)ハツカアマリフツカノヒ(二十二日)ハツカミカノヒ(二十三日)といったように、宮古、八重山の方言では今なおトヲカミカ(十三日)トヲカヨカ(十四日)というように称えている。八重山では一から二十までは固有のとなえ方をしてトヲヒトツ(十一)トヲフタツ(十二)⋯⋯というようにいっている。宮古島に至っては一入(ヒトシオ)古代の面影を留めているのである。即ちハタツ(二十)ミスツ(三十)ヨスツ(四十)イスツ(五十)ムスツ(六十)ナナスツ(七十)ヤスツ(八十)ククススツ(九十)ムムツ(百)という数え方がある。また一人をタヴキャー、五人をイツヌピト、二十一人をパタヌピトタヴキャー、百人をムムヌピトととなえるのはよほど面白い」         写真は意味はなし。ただの飾りです。なぜかおじいは三線を持っている。

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 沖縄は、大和ではもう使われなくなった古い日本語が残っていることで、知られる。これが数字の数え方にも当てはまる。なれるまでは、苦労する。でも「♪月ぬかいしゃとか・みっか(13日)、美童かいしゃとお・ななつぃ(17歳)」と歌いなれてくると、こちらのほうが歌の雰囲気にあう。ちなみに「♪月ぬかいしゃじゅうさんにち、美童かいしゃじゅうなな歳」と歌えば、民謡の味わいをまるっきり損なう。「しまくとぅば」(島言葉)には、島人の肝心(ちむぐくる)がある。どんなに古い数え方であろうと、大事にしなければいけない。

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コメント

rbciラジオの「くむじ放送や~」は「沖縄の旧暦にまつわる歴史、風俗、文化をふか~くゆる~く伝えるオバカ教養番組」がキャッチブレースなんですが、番組のコーナーで「ザ・ベストウチナー123」というのがあります。このとき、MCの智二は「では、このコーナーにいっちゃいましょう。『ザ・ベストウチナー ティーチ・ターチ・ミーチ』!」と言います。ウチナーンチュは結構、日常生活のなかでそういう数え方をしているようですね。「ティー、ター、ミー、ユー」と省略していう時の方が多いかもしれませんね。元ちゃんの歌にもあります。「月ぬかいしゃ」や「とぅぱらーま」は確かに「トカ・ミカ」「ナナツ」と唄わないと、味が全然ないですね。沖縄に古い数え方というか、数え方の表現が残ったのは、美しい日本語が残っているという意味で、誇らしいことではないでしょうか。古謡「おもろさうし」はその代表格ですね。

 ティーチ、ターチ、ミーチという数え方は、なんかやさしい感じがあっていいですね。ヒチュイ、ターチ、ミッチャイという、人数の1人、2人、3人の数え方もよく使われてますね。古い数え方が残ったのも、それが一つの文化であり、大事にしたいですね

若かりし頃本部でバイトしていた時、こっちでは「ター、ユー、ムー、ヤー、トゥ」と数えるんだよと教わったことがありました。今でも中部以北では、若者でも日常でこのように数える人は多いように思いますが、ナファンチュの若者はどうなのでしょうかね。
ミャークフツはもっと深刻で、知り合いの若者は親との会話は共通語でないと会話ができず、聞くこともできないのが普通ということを聞きました。電話で方言で話されるとわからないので「はー?」というと親はごめんごめんといって共通語で言い直すそうです。
民謡もそうですが、「シマクトゥバ」継承していって欲しいですな。

 宮古言葉は、下地勇が歌う曲なんか、まるでフランス語で歌っているような感じで、分かったのは「ネンキン(年金)」といったところだけでした。でも宮古言葉に誇りを持って歌っているのはいいですね。
知り合いの宮古出身のおじいやおばあは、ウチナーグチに苦労したようです。80過ぎでも「民謡の言葉がわからんさー」と言ってます。
 宮古民謡で好きな唄がたくさんあって、歌っていますが、発音にもう四苦八苦です。しかも「す」に「。」がつくなど、いまだ正確な発音がわからないものもあります。それでも、とにかく歌って慣れるしかない。

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