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2011年5月12日 (木)

男女のデュエット曲の難しさ

 沖縄民謡を聞いていて、慣れるまでとても気になったことがある。それは、女性の声がとても高いことだ。男女デュエットというか、掛け合いというか、一緒に歌う曲がとても多い。掛け合いでなくても、女性がハヤシを入れた曲も多い。その場合、ときには金切り声に近いほど、高い声もある。
 なぜ、女性の声が高く聞こえるのだろうか。そこには、ある秘密がある。それは男と女のキーの高さが違うことに起因する。

 カラオケに行くと、男が女性歌手の曲を歌う場合、2度上げるとだいたい合う。上げるといっても、男は、通常は女より一オクターブ下を歌っている。つまり、女と男の声は、一オクターブ近い違いがある。ただ、女性歌手の曲を、そのまま一オクターブ低く歌うと、音程が低い部分は低すぎることになる。だから、2度上げて一オクターブ下で歌うとちょうどいいくらいのキーになるわけである。

   写真はラジオ沖縄の「ホーメルでこんにちわ」で歌う盛和子さんと息子ののーリー。
   文章とは関係ない。

043

 ちなみに、歌謡曲の男女デュエット曲の場合、このキーの違いをどうするかが工夫のしどころである。男女どちらかのキーを軸にして作曲すると、片方は声を無理することになる。だから、男女ともあまり無理をしなくても、声を出せる音域で歌えるようにすることが多い。
 よく知られがデュエット曲を例にとる。懐かしい橋幸夫と吉永小百合の歌う「いつでも夢を」、石原裕次郎と牧村旬子の歌う「銀座の恋の物語」、ヒロシ&キーボーの歌う「三年目の浮気」といった曲を見ると、男女とも割合、楽に歌える旋律になっている。音域があまり広くないのだ。
 また、多少高い音を使っていても、その部分はどちらか分担して歌うようにすればよい。つまり、歌謡曲の場合は、はじめからデュエット曲として、男女の歌手も想定して作曲しているから、双方があまり無理しなくてもよいように作られている。017  この写真も文章とは関係ない。昨年の離島フェアーの芸能の舞台である。

 ところが、沖縄民謡の場合は、事情がまるで違う。男女掛け合いの歌だからといって、男女の音域にうまく合うようにとか、そんな考慮はしていない。通常、民謡を演奏する場合は、三線のキーは、「4」=「C」や、低ければ「3」、プロは「5」「6」とかも使う。これは、私が思うには男性のキーが基本になっている。だから、男性のキーで歌う場合、女性はまるきり一オクターブ高く歌うことになる。私は通常キーは「4」にする。
 私の知り合いの女性は、「これでは高すぎて歌えない」と言い、彼女と歌う場合はキーを低くし「2」にする。つまり、キーで2度違いがある。でも、みんなが演奏する場合は、そうはいかない。だから、女性は高い「4」などのキーで一オクターブ上を歌うことになる。
 女性歌手が、一人で歌う場合、三線のキーは低くしている人もいる。三線入門書の付録についているCDは、やはりキーは「2」にしてあった。女性のことを考慮したのかもしれない。

 たとえば、夫婦の情愛を歌った「夫婦船」(ミイトゥブニ)、戦前に沖縄で盛んだったパナマ帽作りを歌った「帽子くまー」、桃売り女性と彼との愛情をテーマにした「桃売アン小(モモウイアングヮー)」、沖縄戦のあと収容所があった名護市二見(フタミ)での出会いと別れを歌った「二見情話」など、たくさん掛け合い曲はある。
 歌謡曲のように、特に男女が歌いやすいことを考えて作曲しているわけではない。だから、女性は甲高い声を出さざるを得ない。といっても、のびやかな高音が出れば、それはそれでとても魅力的である。
 女性のハヤシで、感心するのは、八重山の代表的な民謡である「ツパラーマ」である。「彼女のことを思って通えば千里の道も1里に思える。でも帰りの道はまたもとの千里のように遠く感じるよ」と歌う。この間に「ツンダサー、ツンダサー」とハヤシがはいるが、美しい上手な人がハヤシを歌うと、天空に吸い込まれるように、高く響く。どこからこんな美しい高音が出るのだろうか、と思うほどである。
 まあ、あまり沖縄民謡を聞いたことがない人は、「ユーチューブ」でいくつか動画がアップされているし、とくに「ツパラーマ」も出ているので、聞いてみてほしい。
 なぜこんなマニアックな話しを書いたのか。それはサークルで、いつもキーの高さが問題になる。それとカラオケに行くと、いつもキーの設定で悩まされるからである。それだけのことである。

 

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コメント

民謡の男女のデュエットは、女性の音域が高くて困ります。とくに私は通常でも歌謡曲でも女性歌手より1度か2度低い音域なので、これがキー操作できない民謡となると、苦労します。1オクターブ高い音程できれいに歌うというのは相当苦労しますよ。でもカラオケ教室の先生の体験にあるように、いまのお年寄りは、民謡の掛け合いの曲はキーなんておかまいなしに、たとえ認知症になっていても条件反射的に口をついて歌詞が出てくるそうですから、唄い慣れればたいした問題でもないのかもしれませんね。名だたる掛け合い曲は、よく「民謡で今日拝なびら」でかかるでしょう。だから歌いにくいなあという曲でも、好まれていますね。
「ツマパーマ」のハヤシは、私はどんなにしても宮良康正さんのお弟子さんのような声は出ませんねえ。大工苗子さんのハヤシはかん高過ぎてちょっと・・・。あのハヤシができれば一人前ですね。

 サークルでも、キーが男性向きで、高くて女性は苦しいだろうなあと思って「これだと音が高すぎて歌うのが大変じゃないですか」とおばあに声をかけると、「そう、大変だよ」ちう人はいない。「別にー、普通じゃないの」という感じです。もう民謡はこんなものと慣れています。それに、前に誰か「キーが高い」と言った人がいて、先生がキーを「2」に下げたら、おじいが騒ぐ。「これじゃ低すぎる」「こんな低い声では歌が映えないからダメだよ」と言う。いつの間にか、元も「3」に戻りました。
 女性のハヤシはいい声の人はいいけれど、あまり好きでない高音の人がいますね。それに沖縄民謡は、甘みのように裏声を使わないので、女性は高い声を求められます。

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