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2011年6月16日 (木)

薬師堂は実在した

 有名な民謡「恋の花」(クイヌハナ)の中に「薬師堂」が登場することをめぐって、これは何を意味するのか、私見を書いてきた。いくつかの解釈があったが、有力な史料を見つけたので、紹介したい。

 その前に、「恋の花」で歌われている薬師堂の歌詞は、「♪波之上に行こうか、薬師堂に行こうか、なれた薬師堂に行こう」という部分である。この薬師堂の解釈をめぐる諸説を振り返っておく。
その1。「薬師堂」は実在しない、架空のことを歌っている。
その2。「薬師堂」という沖縄芝居があったので、芝居に行こうという意味ではないか。
その3。「薬師堂」という地名があった。ジュリ(遊女)を連れて遊びにいくような場所だった。
 知り合いのおじい、おばあに尋ねたかぎりでは、どうも、最後の地名説が一番あたっている感じがすると書いた。
 しかし、「薬師堂」という地名があったということは、もともとその地には薬師堂が実在したのではないか、という疑問があった。疑問を説くのには、古い拝所、寺など記した文献にあたるのが一番だ。それで『琉球国由来記』をめくってみた。これは、1713年に首里王府の手で編集された。この中の「那覇由来記」の項に、「薬師堂旧跡」と記載されている。かいつまんで意訳して紹介する。

 当初、那覇東南の海中で夜光る物があった。人は皆奇異に思った。ある時、漁師が網で引きあげると、石像の薬師如来が出てきた。ただごとではない。如来の威光であると、この霊験の地に土を築いてお堂を建て、薬師如来を崇奉した。寺を造り、東光寺と称し住僧がいた。寺と那覇との間、海中に橋をかけていた。のちに海中を埋めて大地と一つにつながった。090               波上宮の本殿

 このように記されている。東光寺には覚遍座主が住寺したが、康熙11年(1672)に寺地を俗家に売却し、若狭町松尾の麓の地を賜って堂宇を建立した。寺院が造営される前に覚遍が亡くなり、弟子もいなかった康熙21年(1682)、薬師如来を頂峰院に移した奉られたという。
 『琉球国由来記』によれば、薬師堂は実在したわけである。ただし、300年ほども昔のことだ。この史料でも、すでに「薬師堂旧跡」とされている。でも、薬師如来が他の場所に移されたあとも、この地がその由来から薬師堂と呼ばれたのだろう。少なくても架空ではない。
 この地は、いまでは米軍の那覇軍港の一角になっているそうだが、かつては沖縄芝居の舞台になるように、遊びに行く知られた場所だったのだろう。民謡の「恋の花」も、士族と遊女の関係が歌われている。だから、歌詞はやはり「波之上に遊びに行こうか、薬師堂に遊びに行こうか、なれた薬師堂がいいね」という意味になるだろう。
 これで、「薬師堂」とは地名であることが確かめられたと思う。

追記
 ブログを読んだ知人が、薬師堂についての資料を送ってくれた。それによると、薬師堂のあった場所は、那覇市東町の東町会館の奥の付近だっという。那覇軍港の一角というのは間違いのようなので訂正しておきたい。

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コメント

薬師堂が実在する地名であることがわかってよかったですね。芝居のせりふからすると、そこは浜があったんですか。波之上の浜と比べるほど、明媚な浜だったんでしょうかね。でも300年前にすでに「薬師堂跡」と記されているのなら、相当古い時代にさかのぼりますね。東町会館あたりに「薬師堂跡跡」という碑でもあればいいのにね。芝居を演じて人はその由来なんかどの程度わかって演じてるんでしょうか。でもウチナーンチュの観客はそれを見て納得しているわけだから、なにかしら知ってるんじゃないんですかね。内容のないコメントですみません。

 薬師堂の地名はおばあ、おじいはよく知っているけれど、昔、薬師如来を祀った薬師堂があったことまでは、知らなかった。だから「薬師堂は架空である」という説明をした人もいた。沖縄芝居になっているのは、それだけ薬師堂の浜は親しまれた場所だったんでしょうね。
 東町会館ももう取り壊しになるので、あの付近は昔の面影はないでしょう。

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