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2011年9月30日 (金)

「長者の大主」がのべる祝言

 沖縄本島の各地に、旧暦8月15夜の豊年祭、村遊びなどに欠かせない演目に「長者の大主」(チョウジャノウフシュ)がある。祝賀の芸能である。前から聞いてはいたが、先だって八重瀬町の志多伯(シタハク)の豊年祭の際に、初めて観ることができた。

023_2  この演目は、120歳といわれる白髪の長者の大主が、右手に扇子、左手に杖を持ち、子や孫たちを引き連れて、御嶽(ウタキ)や殿(トン)の前で、祝言をのべ、五穀豊穣や村の繁栄を祈願する。そして、子や孫たちの芸能を披露して、神をもてなすというのが通例である。

034  志多伯の祭りでは、村の守護神である獅子加那志(シシガナシ)が登場し、獅子舞を披露した。このあと、子や孫たちによる二才(ニセター)踊り、若衆踊り、空手など次々に演舞が披露された。豊年祭は合計60演目もある総合芸能祭だが、この長者の大主だけでも、いくつもの演舞から成り立っている。

 ただ、祭りの際に長者の大主の祝言が何をのべているかがよく分からなかったので、知りたいと思っていた。『沖縄県史6 文化2』の項に、長者の大主の祝言の内容が掲載されていた。この祝言は、今帰仁村勢理客(ナキジンソンセリキャク)のものだというが、祝言の大筋は他の地区でも、だいたい似ているのではないだろうか。勝手な推測をして、この祝言を紹介しておきたい。

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 訳文で紹介する。
 「アア尊と 吾ぞこの村の 120歳になる 長者の大主 御慈悲ある御代の 徴(シルシ)現われて 十日毎の夜雨 五日の真南風 柔々とくださって 作る作物も 満作に下さって 今日の佳き日 今日の勝る日 年々の豊年の願いを 賑やかにしょうと思って 踊りと狂言を 仕組んでありますので 遊ばしてお目にかけましょう 踊らしてお目にかけましょう お守り下さい アア尊と さあさあ孫達よ 踊ってお目にかけよ」

 この祝言を読めば、この長者の大主という演目が何を願い、何を意味するのかすべてが盛り込まれている。つまり、雨露の恵みを受けて、農作物が豊作となり、村が豊かに繁栄することをお願いします、子や孫たちの芸能を披露するのでお守りください、ということである。

 ここで「狂言」というのは、方言では「チョウーギン」と呼ばれている。もともとは大和の狂言から来ているようだ。でも、いまはもっと広く、演劇的なものを意味し、それももっぱら喜劇を指すそうだ。志多伯の祭りでも、長者の大主の次には狂言「大按司願い」が演じられたが、短い喜劇だった。

045     豊年で平和な世を願う「弥勒様」のからくり人形がのった志多伯の旗頭

 沖縄の各地で旧暦8月15夜には、豊年祭、村遊び、村踊りなど盛んに演じられた。この時期は、稲の収穫が終わり、神への感謝と来る年の五穀豊穣、村の繁栄を願う祭りとして、いまでも盛んである。なかでも、この長者の大主は、祭りの意味を凝縮して表現していることが、この祝言を読むとよくわかった。

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追記
 いくぼーさんから、コメントがあったように、志多伯の「長者の大主」では、村の守り神である獅子加那志にたいして芸能を披露して見せているようだ。舞台で、長者の大主が子や孫を引き連れて登場すると、獅子加那志が出てくる。守り神として獅子舞を演じその存在をアピールすると、そのあと大主は、墓参りの際に、酒や米など入れて持って行く「ビンシー」を持ち出して、守り神である獅子加那志に、お酒を注いで飲ましていた(上の写真)。

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コメント

志多伯の「長者の大主」の口上は、マイクがないためか、何を言っているのか聞こえませんでしたね。そういう内容のことを言っていたんですか。獅子加那志がムラの守り神なんですよね。獅子加那志に演舞を奉納するんじゃなかったですか?
 今年の豊年祭はどこのムラでも「○年ぶりの組踊上演」とか「○年ぶりの獅子舞」など、数年に一回の年に当たったようですね。
 「長者の大主」の大主役になった人はめでたいですね。嘉利~(^^♪

 志多伯の長者の大主の祝言は、聞き取れなかったですが、だいたい似たような内容になるのではないかな、と思って「沖縄県史」で紹介されている祝言を読みました。
たしかに、獅子加那志は、村の守り神なので獅子加那志に演舞をお見せするというのが、志多伯に近い他の地域の例でありました。
 志多伯の場合は、長者の大主が登場して、すぐに獅子舞があったので、その関係がよくわかりませんでしたが、多分、獅子加那志に見せるというのでしょうね。守り神が演舞して見せるのはおかしいですから。獅子舞は、守り神様の登場という意味ですね。そういえば、獅子が舞ったあと、大主が酒など入れたビンシーから、お酒をついで飲ましてましたね。

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