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2012年3月31日 (土)

琉球舞踊は恋の琉歌に満ちて、その3

愛の契りは深い

愛情と契りの深さを表現した舞踊に「天川(アマカー)」がある。「天川節」はこんな歌詞だ。

 「♪天川の池(イチ)に 遊ぶ鴛鴦(ウシドゥイ)の 思ひ羽(ウムヒバ)の契(チヂ)り 与所(ユス)や知らぬ」

「天川の池に遊ぶおしどりの 思ひ羽に表わした固い契りのように 私と彼女の契りは固く深く 愛し合っていることを誰も知らない」

 「思ひ羽」とは、おしどりのオスの両側にあるイチョウの葉のような羽のことである。

002

                嘉手納町比謝川のそばにある「天川」の歌碑

もう一つの「仲順節(チュンジュンブシ)」は、次のように歌う。

「♪別れても互(タゲ)に 御縁(グイン)有てからや 糸に貫(ヌ)く花の 切(チ)れて退(ヌ)きゅめ」

「別れてもお互いにご縁があるからには またお会いできるでしょう 糸に貫かれた花は散り去ることがないように 二人の縁はしっかり結びついています」

 愛し合いながら、なんらかの理由で別れなければならない二人。でも「糸に貫けれた花」は決して散ることはない、と契りの深さを歌っている。

 やはり若い男女の愛情表現を、芸にしたものに「加那よー天川」がある。これは、早弾きの軽快な曲で、恋歌であるから、とっても人気がある。夜になると野原や砂辺に若者が集まり、歌や踊りに興じた「モーアシビー」では定番の曲だった。

「加那よー」はこんな歌詞である。

 「♪加那よー面影(ウムカジ)の 立てばよー加那よー 宿に居(ウ)らりらぬ でちゃよー押連(ウシチ)れてよー よー加那よー 遊(アシ)で忘(ワシ)ら」

「愛しい人の面影が立って 家にじっとして居れない さあ、連れ立って遊び あの人のことは忘れましょう」

「♪加那よー貫木屋(ヌチヂヤ)の あさぎよー加那よー 手巾布(ティサジヌヌ)たてて 我が思(ウム)る里によー加那よー 情呉(ナサキクィ)らな」

「立派に建てられた離れで 手巾を織って 私が思いを寄せている 愛しい人に差し上げましょう」

「♪加那よー情呉る びけいよー加那よー 手巾呉てぬすが がまくくん締(シィ)めるよー みんさ呉らな」

「愛情の印なら なんで手巾なのですか 腰にきりりと締める ミンサ帯を上げましょう」

「♪加那よー遊で忘ららぬよー加那よー 踊(ウドゥ)て忘りらな 思勝(ウミマサ)ていきゆさよー 加那よーあれが情」

「遊んでも踊っても あなたのことを忘れることができません それでも思いはつのるばかりです」

「島尻天川節(シマジリアマカワブシ)」は次のような歌詞である。

 「♪天川の池(イチ)やよ 千尋(シンピル)も立ちゅいよ うりよりも深くよ 想(ウム)て呉(クィ)て給(タボ)れよ」

「天川の池の深さは千尋(1尋は約1・8㍍)ほどもあります それよりも深く私のことを思って下さい」

 愛しい人への熱い思いがこもっている曲である。歌三線で演奏するさい、三線は早弾きなのに、歌うのはゆったり声を長くのばしながら歌うので、とても難しい。私も「加那よー」はなんとか弾けるが、「島尻天川」の方は、まだ歌がお手上げ状態である。

 

別れのつらさを歌う

愛する者の別れを歌った舞踊曲に「伊野波節(ヌファブシ)」がある。「伊野波節」「恩納節(ウンナブシ)」「長恩納節」の3曲からなっている。「伊野波節」を紹介する。

「♪逢はぬ夜(ユ)のつらさ 余所(ユス)に思(ウミ)なちゃめ 恨めても 偲ぶ恋の習や」 

「愛しい人と逢えない夜のつらさは 他人事だと思っていたのに あの人のつれなさを怨みつつ 逢いに行かずにおれない この恋の切なさを何としよう」

「安富祖流工工四」でこの歌だけだが、他の歌詞も紹介したい。

「♪伊野波の石こびれ 無蔵(ンゾ)つれて登る にやへむ石こびれ 遠さはあらな」

「伊野波の石ころ道を 別れるあなたを連れて登るが いかに遠くても いつまでも続いてほしい道」

「♪明方の空(スラ)や 覚出(ウビジャ)ちゃさ昔(ンカシ) あれと きのぎのの 別れしゅたす」

「明け方の空を眺めると 昔のことが思い出される あの人と添寝した 暁の別れのことを」

こんな別れの悲しさや忍ぶ恋のつらさ、忘れられない思いなどが歌われる。「石こびれ」の歌詞は一説によると、山原の伊野波村の坂道を登った所に、かつてハンセン病の隔離場所があり、移住を命じられた夫を見送る妻のひたむきな思いを詠んだ歌だという。

これに続くのが「恩納節」である。

「♪恩納松下(ウンナマチシタ)に 禁止(チジ)の碑(フェ)の立つし 恋忍(クイシヌ)ぶまでの 禁止やねさめ」

「恩納番所の松の木の下に いろいろな禁止の札が立っているが まさか恋まで禁止するような立札ではないでしょう」

「♪七重八重(ナナイヤイ)立てる まし内の花も 匂ひ(ニウイ)移(ウチ)すまでの 禁止やねさめ」

「七重八重に厳重に張り回した垣根の花でも 香りが外に出ることまでは禁止することはできないでしょう」

これは「大切に育てている花(箱入り娘)であっても 恋を語らうことまで禁止はできないでしょう」という意味である。

021   「恩納節」で歌われる恩納ナヴィーの歌碑

「長恩納節」は、こう歌う。

「♪逢はぬ徒(イタヂ)らに 戻(ムドゥ)る道すがら 恩納嶽(ウンナダキ)見れば 白雲(シラクム)のかかる 恋(クイ)しさや結(チ)めて 見欲(ミブ)しやばかり」

「恋しいあなたに逢えずに 空しく帰る道すがら恩納岳を見ると 白雲がかかって見ることができない その様を見るとますます恋心がつのって 逢いたい気持ちでいっぱいになり ほんとうに切ないかぎりです」

これらの歌には、愛しい彼に逢えないつらさ、逢わずにはいられない切なさが共通して歌われている。「恩納節」は、有名な歌人・恩納ナビィの琉歌である。役人があれこれ禁止の立札を立てても、恋まではだれも禁止できないでしょう、という恋への激しい情熱、役人にもたじろがない、おおらかな心意気が歌われている。

遊女と士族の忍びの恋

恋愛の自由のなかった士族が遊女との偲び逢いをテーマにした曲はいくつもある。「花笠踊り」のなかの「花笠節」もその一つである。

「♪花笠造(チュク)やい 面顔隠(ウムカヲゥカク)ちょうて 梅(ンミ)の匂い 里と我が仲 忍ばんむんぬん 我がうてちちゅみ」

「花笠を作って顔を隠しているが 梅の匂いがする 貴方と私は忍びあわなければいけない仲 私は落ち着いていられようか」

「♪手紙ぬ来(チ)ゃんてん 御状(グジョウ)ぬ来ゃんてん 我がうてちちゅみ 枕並びて云(イ)ち聞(チ)かさんむん 我がうてちちゅみ」

「手紙が来ても御状が来ても私は落ち着かない 枕を並べてお話を聞かせてくれないので 私は落ち着かない」

雑踊りの中で数少ない打組み踊りの一つ「川平節(カビラブシ)」も士族と遊女との恋を歌う。曲は物語風に展開する。男女の掛け合いで進む。12番まである。さわりを紹介する。

「彼女の面影に引かれて 私は笠に顔を隠して忍んで逢いに来た」と始まる。彼女は、生涯あなたを連れて遊びたいが、遊女の身では自由にならないと答える。遊女でも自由にならないということはない、私のことを心に染めてくれと迫る。でも彼女は、どうにもならないから、他所に行って欲しいという。彼は他所に行くのなら何のため心を焦がして泣いているのか、と諦められない。もう少し時節を待ってほしいという彼女に向かい、「いっそここで死のう」と迫る。ついに彼女も「命を捨てるほどの思いなら、あなたと一緒になりたい」と応える。

「天のお助けか神の引きあわせか あなたを連れて家に戻れるなんて なんとうれしいことよ」

 この曲はもともと、石垣島の川平に伝わる歌だが、それが本島に伝わり、士族と遊女の恋愛話になったそうである。 

遊女との恋歌では「花風」が名高い。那覇の辻が遊女の街として知られ、首里の士族らが訪れた。「花風節」は、もともと辻の遊女が歌っていた曲だという。

「♪三重城(ミイグスク)に登て 手巾(ティサジ)持上(ムチャ)げれば はや船(フニ)の習(ナレ)や 一目(チュミ)ど見ゆる」

「恋しい人のお見送りをするため 三重城(那覇港入口にある)に上って手巾を打ち振ると 船が早いので一目しか見えない すぐ遠くへ消えて行ってしまった」

これに続くのが「述懐節(シュツクエーブシ)」である。なんと50節前後も歌詞があるという。

「♪朝夕さも御側(ウスバ) 拝(ウガ)みなれ染(ス)めの 里や旅しめて 如何(イチャ)し待ちゆが」

「朝晩いつもおそばにいて 恋しいお顔を見て楽しく暮らしていたのに こんど旅に出ていかれて 私はどうしてお待ちしましょうか」

「♪別れゆるきはや 遺言葉(イクトゥバ)も絶えて 袖(スデ)に散り落(ウチ)る 涙ばかり」

「別れるときにいう言葉もなくなって 袖に散り落ちるのは 涙ばかりである」

他にも、こんな歌が続く。「愛の喜び、やるせなさ、恋の悲しみ、慕情、別れの切なさ、ままならぬ浮世など、恋をテーマに自由奔放に表現した情感豊かな歌ばかり集めたもの」(『おきなわの歌と踊り』)、それがこの曲だという。

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