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2012年4月25日 (水)

中西繁「廃墟と再生」展を観る

120425_113601_2  洋画家・中西繁さんの「廃墟と再生」展が4月25日から始まり、浦添市美術館に観に行った。5月6日まで。中西さんは2010年、やはり同美術館で「棄てられた街in沖縄」展を行い、強い感銘を受けた。

 中西さんは、もともと建築家。その傍ら絵を描き、パリの雨に濡れた街など描くとピカ一。とても情緒がある。人気のある画家の一人である。その中西さんが、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、壊滅に陥った都市を描きだし、「廃墟」をシリーズで書き続けている。

 Photo  アウシュビッツ、チェルノブイリ、サラエボ、ベオグラード、ヒロシマ、神戸など「廃墟」が展示されていた。廃墟は美しくない。普通は絵画の対象になりにくいだろう。しかし、中西さんが描いた「廃墟」は、無言の中に、廃墟をつくりだした戦争、人種差別、原発事故、震災などによるすざましい破壊、人間の命と尊厳の抹殺などを描きだす。圧倒的な迫力で観る者に迫ってくる。

2 上の絵は、チェルノブイリの石棺。前にも見ているが、東北大震災のあと、福島原発の事態を見ると、生々しく迫る。
 前回からの2年間に大震災が起きた。中西さんがテーマとする「廃墟」シリーズの対象は、本来新たに起きてほしくはない。でも、不幸にも日本で、未曾有の破壊と「廃墟」をもたらした。中西さんは、南三陸の「廃墟」を長さ6・48㍍もある大きな作品に描いていた。絵の前に立つと、あたかも大津波の被害の現場に立っているかのように錯覚させられる。災難に遭った人々のことが胸をよぎる。

Photo_2  展示のもう一つのテーマが「LAND・SCAPE(ランド・スケープ)」。ヨーロッパの歴史ある街、パリの雨にぬれた歩道など描いている。廃墟を見終わったあとで見ると、色彩の美しさ、街の明るい風景になにかホッとする。上の写真では、上段が「棄てられた街」、下段が「LAND・SCAPE」である。

Photo_3 沖縄の風景も、ブセナビーチの夕陽、首里城の2点が展示されている。これは前回も観ていた。この「廃墟」と「LAND・SCAPE」は、相反するようであるが、都市の破壊と創造というか、つながっているものがある。廃墟の街もかつては、みんな美しい、人々が生き暮らしてきた街である。戦争や災害は一瞬にしてそんな人間の営みも町並みも破壊するのだ。
 この都市と廃墟を見る中西さんの絵には、建築家としての見識と視点が生きているように思う。

 中西さんは、あいさつ文の中で、戦争や核兵器、原発依存を厳しく告発し、平和と安全を守る重要性を訴えていた。熱い心を持った画家である。

 中西さんが、美術館のエントランスホールで、絵の公開制作を行っていたのには驚いた。その絵は福島原発の惨状を描いていた。下の写真は、その模様の写真が撮れないので、裏側から撮ったものだ。中西さんも写っていない。ただ、これだけ大きいカンバスに描いていることが分かるだろう。精力的に絵筆を持って描いていた。
  「廃墟」の絵はどれも大作である。廃墟にたたずむとその破壊の凄まじさに気分は決して高揚しないだろう。だが、これだけの「廃墟」の大作は、内面から突き動かす、ほとばしるような情熱、使命感、エネルギーが持続しなければ、とても制作できないだろう。そんなことを感じさせられた。

120425_113603

 前回も今回も、これだけの絵画展なのに、無料である。確か、前回も沖縄に作品を運搬するだけでも多額の費用がかかるけれど費用持ち出しで、沖縄の人たちに見てもらいたいと、展示をしたと聞いた記憶がある。今回も恐らくそんな努力があるだろう。中西さんと美術館関係者に感謝したいと思った。

 

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コメント

中西さんの「棄てられた街」シリーズはどれも建物を対象に描いていますが、元建築家だけあって、対象物もそういうものに向けられるのでしょうね。
ひとつの建物が廃墟であり、戦争で破壊された跡であり、残ったものであり、南三陸町のように、津波ですべて流されたあとの街全体の「廃墟」であったりしますが、常人には正視しがたいものでも、冷静に描写されているところは、「この建物、風景を絶対に後継に伝えるんだ!」というほとばしる情熱を感じさせます。
公開制作は28日まで、朝10時から2時間、中西さんのはからいでおこなわれているものです。展示中は、中西さんの講演が2回(2時間)もあって、絵画教室もあり、無料なのにすごいサービス精神(?)です。
沖縄の人にたいしてだから、このような配慮をしてくださっているのでしょうか。
絵を本土から運ぶだけでも、相当費用がかかると思いますが、御自身の持ち出しをしてまで、沖縄で個展をしてくださるというのは、沖縄に特別の思い入れがあるのでしょうね。
できれば、公演も聞きたいです。

中西さんの「廃墟」シリーズは、沖縄戦で全土が廃墟のようになった沖縄では、他県以上に切実に受け止められるでしょう。そのうえ、広大な県土が米軍基地に取られ、県民は立ち入りことも出来ない状況も、ある意味「廃墟」の延長ですよね。
 「廃墟」を見る中西さんの胸の内には、悲しみ、無念さだけでなく、憤りや命を奪われた人々の思い、この惨状を世の人々に伝えようという、エネルギーが噴き出してくるのでしょうね。でなければ、荒涼とした廃墟を連続して大作に仕上げることはできないでしょう。
 中西さんは、いまは沖縄戦の「廃墟」は描けないけれど、沖縄への思いは強いものがあるから、個展を開いてくれるでしょう。
 これまで東京でもいろんな美術展に出かけたけれど、公開制作なんか、絶対に見ることはできなかった。無料で絵画教室までやるなんて、すごいですね。
 

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