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2012年8月 4日 (土)

民衆に愛される沖縄歌劇、歌劇の誕生

沖縄歌劇の誕生

 ここで改めて、沖縄芝居(ウチナーシバイ)と歌劇との関係を整理しておきたい。大和的には、芝居と歌劇は別ジャンルとなる。でも、沖縄芝居は、歌劇が含まれる。つまり沖縄芝居は歌劇と方言せりふ劇に分類されるのである。

 沖縄歌劇は、歌とせりふ、舞踊、しぐさで組み立てられた歌舞劇である。庶民の風俗、人情を描いた作品が多く、悲恋物が人気をよんだ。

 

 方言せりふ劇は、沖縄方言に近いせりふで演じられ、本土の歌舞伎や新派の影響を受け、主に歴史や故事、伝説に題材をとった史劇が多い。せりふ劇でも、歌三線など音曲がつく。

 沖縄芝居を見るたびに、感心するのは、役者たちはたんに芝居を演じられるだけではだめ、歌い踊れないといけないということ。だから、役者たちは、演技だけでなく、歌と踊りの芸も磨く。

 いまでも、芝居の役者と歌三線の古典音楽、民謡の唄者を兼ねている人がかなれいる。

最初につくられた沖縄歌劇は、明治26年(1893)頃、上演された玉城盛政の「あば小(グワ)へい」(へい!娘さん)、「りんちゃあばあちい」(やきもちやきのかみさん)で、ついで渡嘉敷守儀(トカシキシュギ)の「茶売(チャウヤア)やあ」、「主ん妻(スントゥジ)」だといわれている。

 初期の歌劇は、「歌劇」とは銘打っていなかった。「踊り」と呼ばれていた。もっとも、王府時代の「組踊」も「踊り」の名がついているけれど、歌舞劇だから、組踊を古典歌劇、古典楽劇とでも呼ぶほうがふさわしいと思う。

 そんなことからも、初期の歌劇が「踊り」の範疇に入れられていたとしても不思議ではない。

094     首里城での「中秋の宴」で演じいられた組踊「花売りの縁」

「あば小へい」は、地謡が歌う踊りから、登場人物の歌唱による所作へ変化しただけの単純な作品だった。それだけに打組踊から歌劇への変化の道筋がよくわかるという。

 それにしても、沖縄の歌劇は、本土の歌劇に比べて時期的にはかなり早い。沖縄では、明治26年から33年までには歌劇が作られた。それに比べ、本土の創作歌劇の始まりは明治38年というから、沖縄より遅れてはじまっている。大野氏は「沖縄の歌劇は日本最初の創作歌劇だといえるでしょう」と位置付けている。

 考えてみると、沖縄で独自の歌劇が早く生まれたのは偶然ではない。琉球王国では長い組踊の伝統があったからだ。組踊は、ユネスコの無形文化遺産にも登録された世界に誇る総合芸能である。そんな組踊の伝統と技能が継承されてきた沖縄であればこそ、歌劇もいち早く創作されたのではないだろうか。

ただし、中国から国王任命のために派遣された冊封使(サッポウシ)を歓待するために創られた組踊は、演目のほとんどが、敵討ちや孝行といった忠孝物である。その土台には儒教道徳がある。恋愛物は、「手水の縁」などごく一部しかなかった。

忠孝物ばかりでは、民衆を満足させることはできない。恋愛物をはじめとする大衆的な芝居、歌劇は、民衆から歓迎されたのだろう。

このあと紹介するが、「泊阿嘉(トゥマイアカ)」や「薬師堂」といった恋愛をテーマとした歌劇が生まれて、人気を集める。

「『泊阿嘉』や『薬師堂』の世界はいわば組踊りの『手水の縁』の世界をひくものである」、「手水の縁」で繰り広げられた「恋愛至上主義的な考え方はロマンの世界を美しく構築する」ものとなった。「かけ歌の世界が踊りと結びつき、さらに組踊りによって劇的構成が付与されることによって、今日の歌劇作品が生まれている」と矢野氏は指摘している。
 しかも「歌劇の場合は、民謡を基盤とすることにより、組踊りよりもさらに親しみやすいものとなり、大衆の中に根を下ろした。そこでは組踊りのもつせりふと音楽の一体性が、古典音楽と民謡にのせたせりふの一体性におきかえられ、より庶民性を増し土着性を強めつつ民衆の中へ入って行った」と矢野氏はのべている。

組踊を「王府の歌舞劇」とすれば、歌劇は「庶民の歌舞劇」と言えるのではないだろうか。

081         「中秋の宴」の組踊で演奏する地謡の方たち

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