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2012年12月12日 (水)

宮古島探訪、宮古上布

宮古上布

人頭税といえば、宮古島では女性は反布の貢納を強制された。そこには、幾多の哀史が刻まれている。そんな伝統を受け継ぎ、宮古上布を織っている様子を見たいと思って、宮古伝統工芸センターを訪ねた。市役所近くで、市街地のど真ん中なのに、表通りには面していなくて、看板も目に付かず、やっと辿り着いた。この場所は、王府時代の政庁・蔵元のすぐ裏にあたり、かつて貢布座があったところだという。

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 宮古上布を実際に見ると、極細の糸で織られた薄い布地で、予想以上に繊細な織り物である。センターの二階に上がると、機織りの作業も見ることができた。若い女性たちが、何人も作業していた。彼女たちが、宮古上布の伝統を継承している。

製造工程をビデオで見せてくれた。苧麻を刈り取り、茎の皮を剥ぎ、水に浸し、外皮を除いて繊維を集め、細かく裂いて糸を紡ぐ。糸を藍で染め、乾燥させる。縦糸、横糸を使って織り上げていく。大雑把に言えば、こんな工程だが、実際はじつに複雑で気の遠くなるような作業である。労苦のほどがしのばれる。

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 宮古上布を初めて作ったのは、稲石という女性だった。洲鎌(スガマ)という地区の与人(村長格)だった夫・真栄が、王府の進貢船を遭難から救い、「頭(カシラ)」の地位に栄進したことに感激し、恩に報いるため精巧な綾錆布(アヤサビフ)という麻織物を献上した。国王はこれを讃え、真栄を親雲上(ペーチン)という位につけた。稲石はその製法を近隣に伝えたという。16世紀末ころのことらしい。いまでも稲石を讃える「稲石祭」が行われ、宮古上布の継承と発展を誓っている。

その後、藍染の細やかに織られた上布など反布は、首里王府にとって人頭税の重要な財源として、生産から上納まで厳しく管理し、貢納させた。

                             

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人頭税は、15歳から50歳の男女に、粟と反布が割り当てられた。平民女子の3分の1が織り子となり、3分の2は糸紡ぎなどに従事させられた。各村に反布の割り当てが来る毎年7月、8月頃から、女たちは番所内の「苧績屋(ブンミャー)」と呼ばれる織坐にこもり、昼夜の作業が続いた。

とくに20ヨミ、18ヨミという最も細い麻糸で織る上布は、糸を紡ぐのも容易ではなく、織るのもとても困難な作業だった。絵図が複雑なものは、一反を織るのに、2、3カ月かかり、割り当ての3反を織るのに180日もかかったという。

同じ女性でも士族と農民では、大きな違いがあった。「士族の子女は染めの必要のない白布、農民は最も手間のかかる17ヨミ以上の紺細上布が貢納布だった」(「琉球新報」1993年11月21日、「タイムスリップin琉球、宮古上布」)

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1893(明治26)、人頭税下の宮古を訪れた笹森儀助は、村番所内の織坐(苧績屋)を見た。精巧な反布を織っている様子について、小屋は「薄暮の如し」暗さで、「其の苦使せらるる現況は、他府県懲役人にも劣る事、数等なり」。つまり、苦役のような現況は、他府県の監獄の囚人にも数段劣る、と表現している。

織り上げても、役人の厳しい検査に合格するまで安心できない。しかも、権威を背景にした役人が、目を付けた女性をわがものにしようとする振る舞いも横行した。

宮古民謡「豆が花」には、そんな情景が歌われている。

目差主(メザスシュ)という役人が、17歳の娘に目を付け、前里の親父に「俺にくれ」と求める。「娘は身分が違います」「まだ子どもです」と断るが、「俺の言うことを聞かなければ、20ヨミの細物を織らすぞ」と脅すが、「細物を織らされても娘はやらない」と拒否する。役人の横暴ぶりとそれに抵抗する気高い父親、娘の姿が歌われている。

1903年、人頭税が廃止されてようやく、女性たちは苦役から解放されて、宮古上布も自由生産、自由販売となった。

 

人頭税関係の挿絵は「人頭税廃止100周年人頭税資料展」冊子から借用した。

 

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