「無情の月」あれこれ
沖縄民謡「無情の月」について、先にブログにアップした。その後、この歌について、興味深いことがわかったので記しておきたい。
一つは、この曲とまったく同じ旋律の唄がいくつもあることだ。たとえば、「あこがれの唄」。ネットの「唯我独尊的島唄解説さん」によると、この曲は、昭和民謡の名曲をたくさん作った普久原朝喜さんの作詞、作曲だとのこと。ただし『歌詞集 沖縄のうた』では、作詞、作曲者名は書かれていない。
「あこがれの唄」は、戦後の曲である。
『歌詞集 沖縄のうた』から歌詞を紹介する。
♪いちぶさや大和 住(シ)みぶさや都 あさましや沖縄 変いはてぃてぃ 変いはてぃてぃ
♪大和世(ユ)に変てぃ アメリカ世なてぃん ぬがし我が生活 楽んならん 楽んならん
♪戦場(イクサバ)ぬ後や かにんちりなさや 見るん聞く物や 涙びけい 涙びけい
♪自由に我ん渡す 舟はらちたぼり 若さある内に 急(イス)じ行かな 急じ行かな
歌意は、逐条的にはわからない。大まかにいえば次のようなことを歌っているだろう。
行ってみたいな大和 住んでみたいな都 哀れな沖縄 変わり果ててしまった
大和世からアメリカ世に変わったけれど どうして わが暮らしは楽にならない
戦場の跡は 無情なことだ 見るもの聞くもの 涙ばかり
自由に私たちを渡してくれる 舟を走らせてほしい 若さあるうちに急いで行きたい
盛和子さんの唄でも、同じ旋律で歌った曲がある。「母の志情(シナサキ)」という。盛さんのラジオ番組「ホーメルで今日は」で、何回か聞いたことがある。
「これって、いい唄だけれど、旋律は『無情の月』とまったく同じだ」と思ったことだ。残念ながら、歌詞はいま手元にない。
知名定男さんのヒット曲「おぼろ月」も、旋律はとても似ている。少し異なるところがあるだけだ。こちらは、恋唄。別れて去っていった彼女を恨む内容である。
沖縄民謡は、よい旋律の曲は、すぐに替え歌がつくられる。だから、同じ旋律で、別の歌詞の唄があるのは、フツーのことだ。まあ、「無情の月」も、それだけ、愛されていることのあかしだろう。
といっても、「無情の月」が元歌ではなく、替え歌かもしれない。というのは、工工四(楽譜)を見ても、作詞、作曲者の名前がない。もしかして、「あこがれの唄」が元歌なのだろうか。今のところ、判断する材料がない。
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