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2013年8月28日 (水)

日本初の全身麻酔、琉球の高嶺徳明

 「飛び安里」のことを書いたついでに、日本最初の全身麻酔をしたのは、琉球の士族、高嶺徳明であることを紹介しておきたい。

 これも、沖縄では有名だが、県外ではあまり知られていないだろう。

 全身麻酔といえば、華岡青洲が日本初と言われている。有吉佐和子の『華岡青洲の妻』でも知られた。華岡が全身麻酔で手術をしたのは、1804年10月13日である。この日は「麻酔の日」とされている。
 しかしー。琉球ではそれより115年も前、高嶺徳明が1689年に行ったと伝えられる。

 徳明は、10歳の時、福州(中国・福建省)に渡り、3年間滞在して中国語を習熟した。後に、琉球王より魏姓を賜り、中国名を魏士哲と称し、王府の中国語通事(通訳)となった。
 時の王尚貞(第二尚氏の第11代国王)は孫の尚益に口唇裂(上唇が縦に裂ける)があることを深く憂慮し、これを整復する補唇術が福州にあることを知って、徳明にこの術の習得を命じた。

 徳明は、福州に赴き、補唇術を行う医師、黄會友を訪ねて、その術の教示を懇願した。會友はこれを秘伝として教示を固辞したが、徳明の熱意と真摯な人柄に心を動かされて徳明を身辺に置き、昼夜、補唇術を伝授した。徳明はついに13歳の童子の欠唇を師の面前で治療し、治癒させた。かくて、會友から傳方の一切を受け、秘書(秘伝書)一巻を授けられて1689年5月に帰国した。
 

 帰国後、沖縄で5人の欠唇を療治し、中国で学んだ通りに治癒することを確認し、同年11月23日、当時10歳の王孫、尚益に補唇術を施し、治癒させた。
 その後、徳明はこの補唇術を薩摩藩医、伊佐敷道與に伝授した。

Image2_2


 右上の主旨は、高嶺家に現存する「魏氏家譜」に基づいている。
 以上は、琉球大学医学部正門を入ると建てられている「高嶺徳明顕彰碑」(写真)の裏側の碑文からあらましを紹介した。私が、この碑を見たのはもう、5,6年前になる。

 ただ、この碑文では、全身麻酔をしたという傍証は多数あるけれど、確証が明らかでないので、日中研究者が調査を続けているとしている。

 これまで、沖縄では著名な歴史家の東恩納寛惇や金城清松らが、この尚益への手術が全身麻酔を用いたことを明らかにしてきた。
 

 最近では、松本順司著『全身麻酔の魁ー高嶺徳明』で詳細に書かれている。徳明は、1689年2月、福州で黄会友から兔唇の治療法を学んだ。その際、麻酔の秘法も授けられたという。
 5月に帰国すると、大里間切(マギリ、現在の町村)の男女2人に手術を試み成功した。さらに3人にも試みた。
 11月には、王孫、尚益の手術を行った。在番奉行(那覇にあった薩摩の役所)の要請により、薩摩の医師に補唇の秘法を教え、秘書一巻を授けた。

 尚敬王の命で王府の医師、豊元達、柔良心に技法を伝えた。豊見城間切高嶺の地頭になり、高嶺親方(ウェーカタ)と称した。

 松本氏の著作は、手術をめぐる王府内でのドラマを描いている。
 王府で王位の後継者をめぐり争いがあった。尚益は長男だったが、薩摩は思い通りになる王をつくるため、尚益に難癖をつけた。欠唇の尚益は「江戸上りして将軍にお目見えするのに不都合」として、尚貞王の側室の子、尚綱を王につけようとした。
 後継者争いが大きな犠牲を出さずに収束できるかどうかは、初めて麻酔薬を使った外科手術の成果にかかっていたとする。

 この手術は「一子相伝」とされ、徳明は中国の医師との約束を守り、子孫に秘術や秘伝書を伝えず、長い間手術の成功は陽の目を見ることはなかった。ところが、薩摩藩の圧力により王命で、薩摩の医師に伝授したことが裏付けとなり、その名を歴史に残すことになったという。

 この著作は、小説であり、どこまでが史実の裏付けがあるのかは、私には定かでない。
 徳明の補唇術に全身麻酔については、長くなるので、もう少し書きたい。

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