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2013年9月25日 (水)

「半沢直樹」の魅力

 視聴率42%を超えて(関東)圧倒的な人気で終わったテレビドラマの「半沢直樹」。遅まきながら一言いいたい。

 なぜ、そんなに人気が出たのか。その答えとして、勧善懲悪で「水戸黄門」と同類のドラマだから、という評論家がいる。でも、それは極めて浅薄な見方であり、事実としても違う。

 なぜなら、水戸黄門は江戸幕府のときの副将軍である。爺さんの恰好をしていても、最後は葵の御紋を示し、副将軍の権威で悪い役人を糺すというものだ。でも、半沢直樹は、そんな地位はない。振りかざすような葵の御紋も権威もない。

 ただ、銀行の上司、幹部の不正、悪事を暴く証拠を徹底して調べ集めて、突き付けることでしか、追及はできない。悪事の証拠を集めるために、銀行の同僚、同期入行の友人、中小企業の親方など、高い地位ではない、下積みの人々も含めて、みんなで駆け回る。力の源泉は、不正を見過ごせないという深い思いで結ばれた強いきずなである。

 水戸黄門とは真逆である。

 それに、水戸黄門が役人の悪事を懲らしめるのは、幕府の権威を保つことに究極的な目的がある。

 半沢直樹が、悪事に立ち向かう立脚点は、大手銀行が本来の銀行の姿から逸脱していることに対する憤懣である。中小企業が危機にあるとき、資金を貸さないばかりか、引き上げる。倒産させても銀行の利益を守ろうとする。雨の日に傘を貸すのではなく、逆に傘を取り上げる。そんな理不尽なやり方をしてきた者が、銀行の中で出世する。幹部になる。

 銀行に殺された半沢の親父の姿は、彼の行動の原点である。人を人とも思わない、収益だけが至上命題のような、大手銀行の論理とそのもとで出世しながら不正に手を染める幹部。そんな銀行のあり方を変えたい、というところに半沢の究極の目標がある。

 ドラマでは、しばしば銀行のあり方を鋭く問いかける場面が登場する。最終回にも、半沢の大演説が際立った。

 日ごろ、利益至上という企業の論理や、そこでの無理が通れば通りが引っ込む上意下達の企業秩序、社員を道具のように使い捨てて顧みない社員管理ーー。そんな渦の中で苦い思いをしている圧倒的多数のビジネスマン、銀行員、その家族、そして中小企業の親方など、多くの視聴者が共感し、喝さいの拍手を送る。ウナギ登りの高視聴率には、そんな背景があるのではないだろうか。

 あとひとつ、付け加えたいのは主演の堺雅人である。半沢になりきった演技力はなかなかのものである。そのほかの出演者も、みんな個性的で魅力がある。なかなかの適役ぞろいで、ドラマに厚みを与えている。
 堺雅人に注目したのは、NHK大河ドラマ「篤姫」からだ。
 もう一つの注目ドラマが、フジテレビで10月9日から始まる堺雅人主演の「リーガルハイ2」である。主役の古美門研介は、正義の御旗を嫌い半沢とは、真逆の役どころだ。だが、堺雅人の演技がドラマの面白さを支えている。秋に始まるドラマでは「リーガルハイ2」が一押しのお楽しみである。

 半沢直樹のドラマの魅力は、さまざまな角度から論じられている。これ以上、語るつもりはない。ただ水戸黄門と同じという見方にだけ、一言「それは違う」と言いたかっただけである。

 

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