祖慶漢那(スウキカンナ)節は面白い
祖慶漢那(スウキカンナ)節は面白い
沖縄民謡のなかに、県内各地の特産品が登場する曲がある。その典型がスウキカンナ節である。本島の各地の産物を売り手が売り込む様子が描かれている。
1、祖慶漢那 金武からやいびしが 我(ワ)んソーキん小(グヮ)
買(コ)うみそうれえ 汝がソーキん小や 曲(マグ)いぬ悪(ワッ)さぬ
我んミージョウキ 買うみそうれえ
2、我んねえ勝連(カッチン) 照間(ティルマ)どやいびしが
寝座敷(ニザシティ)筵(ムシロ)を 買うみんそうらに
汝が筵ん小や 縁織(フチウ)ち悪なぬ 我んニクブク小 買うみそうれえ
3、越来間切(グイクマヂリ)ぬ 上地(ウイチ)どやいびしが 荒バーキや
買うみそうらに
汝が荒バーキや どくから荒さぬ 我んユナバーキ 買うみんそうれえ
4、山内諸見里(ヤマチムルンザト)ぬ 桃売(モモウイ)アン小やいびしが
山桃(ヤマムム)小や 買うみんそうらに
汝が山桃小や 青さぬ喰(カ)まらん 我ん白桃(シルムム)小
買うみんそうれえ
5、我んねえ糸満(イチマン) 魚売(イユウイ)アン小やいびしが
グルクン小や 買うみんそうらに
汝がグルクン小や 匂いぬ高さぬ 我ん飛烏賊(トボイチャ)小
買うみんそうれえ
6、我んねえ本部(ムトブ)ぬ 瀬底(シイク)どやいびしが
ムンジュル笠小 買うみんそうれえ
汝がムンジュル笠小や 張(ハ)いよぬ悪さぬ 我んクバ笠小 買うみんそうれえ
バーキを担ぐ人(上江洲均著『沖縄の民具と生活』から)
意訳した歌詞は次の通り。
1、祖慶漢那、金武から参りました。ザルを買いませんか。
あなたのザルは曲がり具合が悪い。私のミノザルを買いませんか。
2、私は勝連、照間から参りました。寝座敷用のムシロを買いませんか。
あなたのムシロは縁の織り方がよくない。私のニクブク
(藁で編んだ敷物)を買って下い。
3、越来間切(今の町村)の上地から参りました。粗目の竹カゴを買いませんか。
あなたの竹カゴはあまりに粗すぎるので、私の(米を入れられる)カゴを買いませんか。
4、山内、諸見里の桃売り娘ですが、山桃を買ってくれませんか。
あなたの山桃はまだ青っぽくって食べられない。私の白桃を買ってください。
5、私は糸満から来た魚売り娘ですが、グルクン(県魚になっている)を買いませんか。
あなたのグルクンは匂いが強い。私の飛びイカを買ってください。
6、私は本部の瀬底島から参りました。ムンジュル笠を買いませんか。
あなたのムンジュル笠は張り具合が悪い。私のクバ笠を買ってください。
この曲は、最初は売り手と買い手の会話の情景を歌ったものかと思っていた。でもそうではないという。売り手がお客に対して、自分の土地の物産を進めると、そばで別の売り手がその物産にケチをつけて、自分の持っている物産を売り込むというストーリーの曲である。沖縄でも、売り手、商人の競争が激しかったのだろう。あれこれとケチをつけるところが面白い。
この曲は、昔の沖縄の各地域ごとの特産品が歌われているので、それぞれの地区でどういう特産品があったのかが、よくわかる。
地名が二つ重ねるように歌われているのはなぜだろうか。アルテ三線仲間の玉那霸さんによると、沖縄には同じ地名があるので、近くの地名を付けて表現することによって、これはどこの地名だということが分かるという。たとえば、「照間」「嘉数」「与儀」「大里」「南風原」「勢理客(ジッチャク)」などなど同じ地名のところが複数ある。
これも、前は市町村名と字名というように、大きい地域と小さな地域を重ねて名乗って
いるのかと思っていた。そうではない。なかには、本部の瀬底というように、大きな地名とその中の地名という関係もあるが、一般には二つ重ねていうことで、場所がはっきりするということらしい。
この曲は、本調子の早弾きと三下げのゆっくりしたテンポの両方がある。亡くなった登川誠仁と知名定男が歌ったCDを聴くと、はじめ三下げで弾いた後、女弦(ミージル)を上げて本調子にして、一転軽快に弾いていた。
なお、歌に登場する民具について、別途詳しく書いておきたい。
ユーチューブに知名定男のデビュー当時の演奏があるので、アップしておく。
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