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2018年4月14日 (土)

北山王国をめぐる興亡、その1

  北山王国をめぐる興亡
 
 このテーマで2013年にアップしていたブログの記事が、いつの間にか画面が真っ黒になり読めない状態になっていて、ご迷惑をおかけしました。改めてここに再掲することにしました。ブログのデザインも変更して、今回はなんとか正常に表示されました。よろしくお願いします。

 伝承にみる北山の歴史

 琉球の「戦国時代」とも呼ばれる時代があった。沖縄本島では、各地に按司(アジ)と呼ばれる豪族のような支配者が勢力を争った。本島のなかで、北山、中山、南山という小国を形成した。
 15世紀の初め、尚巴志が中山を攻め、その後、北山、南山も制覇して琉球を統一した。中山が三山を統一したので、琉球国王は中山王と称していた。だから、王府の編纂した正史も、中山が軸となり描かれており、北山、南山の歴史はよく分からないことが多い。

 山原(ヤンバル)を統治していた北山の居城は、いまは世界遺産になっている今帰仁(ナキジン)城である。この城跡を見るたびに、北山は尚巴志に敗れる前には、どんな歴史があっただろうか、と思いが頭をよぎる。  それに加え、本島各地を歩くと、「今帰仁から流れてきた」という言い伝えとそれにかかわる史跡がいくつもある。今帰仁に向かい御願(ウガン)する遙拝所もある。しかも、尚巴志に敗れるより以前に、争いに敗れて落ち延びた伝承がある。
 しかし、通常の歴史書では、伝承は史実とは認められないので、北山が明国に朝貢し『明実録』にその記述がある「後北山」という時代以降の歴史を記した著書が多い。

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 いったい今帰仁城をめぐり、北山ではどんな興亡があったのだろうか。まとまった著書を読んだことがない。もっと詳しく知りたいという思いがあった。そんなとき、たまたま読んだのが伊敷賢著『琉球王国の真実―琉球三山時代の謎を解く』である。
 著者が沖縄各地を歩いて、その土地に伝わる膨大な伝承を収集して、琉球三山時代の歴史を詳述している。北山、中山、南山それぞれに詳細に記述されているので、とても興味深い。
 先行する研究として、東江長太郎著『通俗琉球三山由来記』(1935年出版)とこれを編集した『古琉球三山由来記集』(1989年)がある。東江氏は明治期から沖縄の津々浦々をかけめぐって集めた野史、口碑、伝承をもとに、『通俗』はガリ版刷りで発行した。
 もちろん、学問としての歴史は、文字に書かれた史料、発掘された出土品など、裏付け資料がなければ史実とは認めない。しかし、琉球の古い時代の歴史は、文字に記されていないことが多い。あっても戦災で失われたものも数多い。それに、各地を歩くと、さまざまなお墓、拝所、史跡などがある。それぞれに古い時代を伝える伝承、野史、民話、歌謡などがたくさんある。それらは、当然史実とはいえないけれど、その中には、貴重な史実が含まれているだろう。
 著者は、正史といわれる歴史書だけ見ても本当の歴史はわからない、そればかりか「真実を歪曲し、為政者のために編集されている」ことがある。だから、「伝承がすべて真実の歴史を伝えている」と言うつもりはないが、「野史や口碑の中には真実に近い事跡が多く含まれていることは事実である」と強調している。
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            伊敷賢著『琉球王国の真実』から
 そんなことで、本書の中から、北山の歴史について、私流に興味のある部分を抽出してみた。著書を勝手に利用させていただいたが、私の個人的な読書ノートである。文章を抄録したり、文章のつながりなどのため、多少の手を入れたところもある。興味のある方は、直接、本書をお読みいただきたい。
 なお、『古琉球三山由来記集』『今帰仁村史』からも、折に触れ紹介させていただいた。ここまでは前置きである。  神話時代の天孫王統  北山に入る前に、琉球は神話時代の天孫氏の王統があり、その25世、思金松兼(ウミカニマチガニ)王天孫氏がいた。しかし、「徳おとろえて武威がふるわず」、権臣の利勇(リユウ)が君を殺し、みずから国君と称した。「このため四方騒乱し、兵乱が大いに起こって、按司、酋長は各々兵権によって雄を争うようになり、そのため人民は塗炭の苦しみを受けるようになりました」
 逆臣利勇を討ったのが、源為朝の子で、浦添按司だった尊敦(ソントン)、のちの舜天王である。(『古琉球三山由来記集』)。

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