この秋は、野球が面白い。一つは、高校野球の秋季九州大会。来春の甲子園での選抜大会の出場がかかるこの大会。今年は沖縄で開かれた。なんと、沖縄の沖縄尚学と美里工業が勝ち抜いて、10月31日、初めて沖縄県勢で決勝をたたかった。この2チームは、県大会の決勝でたたかい、このときは美里工が勝利していた。
九州大会では、強豪高校を倒して決勝まで両チームが残ったのは、沖縄県勢のレベルの高さを示している。決勝は、沖尚が美里を4対3で下して優勝し、明治神宮大会に出場する。決勝戦は逆転に次ぐ逆転で、両者の力量が拮抗していることを示した。
来春も大いに期待ができるのではないか。
次はアメリカのワールドシリーズ。レッドソックスとカージナルスの対戦だ。これまであまりワールドシリーズは見たことがなかった。でもお昼時にいつも終盤面白いところをやっていて、レッドソックスの田沢、上原の日本人コンビが中継ぎ、抑えで大活躍していることに刺激され、何回か見た。
改めて思ったのは、上原の投球の見事さだ。球種は少ないが、ストレートのキレがすごい。玉が伸び上がるようだ。球速表示より早く感じるだろう。しかも、コーナーにビシッと決まる。スプリットの曲がりが鋭く、ストライクからボールになるように決まるので、恐らくバッターは、球が消えるように感じるのではないか。なにより、三球三振とか、玉数少なくどんどん追い込み、打ち取る。胸のすくような投球だ。同じ抑えでも、ヨタヨタするのとは大違い。「コージコール」が沸き起こるのもわかる。
これまで大リーグに来ても、故障に泣かされたり、かつてレンジャーズ時代は、ワールドシリーズのメンバーから外されるなど、屈辱も味わった。だから、4勝2敗でカージナルスに勝利した時の爆発するような喜びの表情は、感動的だった。
田沢は中継ぎというより、8回あたりの大ピンチのワンポイントの抑えとしてしばしば登板して活躍したのは立派だ。
ワールドシリーズの見て、初めてわかったことがある。レッドソックスのヒゲモジャ選手の多さだ。数えきれないが、ラジオで聞いたところでは、12人いるらしい。なぜ、レッドソックスにヒゲが多いのか。それは、アメリカンリーグのライバル、ヤンキースが紳士的でヒゲはご法度。それならレッドソックスは逆に大いにヒゲを伸ばそう、ということからだとか。ホントかどうかはわからない。さもありなんというところだ。
最後に、日本シリーズ。楽天が3勝して巨人に大手をかけた。星野監督はあまり好きではない。選手をボロくそにけなすからだ。でも最近はあまりけなす言葉を聞かない。少し変わってきたのだろうか。それに、楽天は、沖縄の久米島でキャンプをする。久米島の人たちはこぞって応援する。巨人は2次キャンプを那覇市で行っている。
楽天がキャンプをする久米島野球場
シリーズでは、巨人優勢の下馬評を覆した。その要因に、巨人打線を封じるピッチングができていることだ。星野は「攻めろ。逃げたら打たれるぞ」という指示をした。島捕手も攻めのリードをし、投手もそれに応えて巨人打線に臆せず攻めていることが、功を奏しているようだ。投手陣が田中、則本の後が弱いと見られていたが、実際は違った。美馬、辛島とも実に立派な投球をした。それに、選手起用も、則本に見られるように、短期決戦のシリーズに相応しい使い方をしている。巨人の原監督は、第5戦でも、楽天に2点リードされ、6回にランナーが出て、投手の内海に打順が回ってきて、本来ならピンチヒッターだろう。だが、そのまま打たせて凡打に終わった。7回には内海を変えた。変えるなら、なぜその前に打席に送ったのか。この試合に負ければ、実質シリーズは終わるという覚悟の采配ではない。
そんな監督の采配の違いも、勝敗に出ているのではないか。
大震災の被害を受けた東北の人たちの期待を一身に受け、希望の灯をともす存在となっているのが、今年の楽天の活躍だ。
楽天は、2005年に近鉄・オリックスの統合で、捨てられた選手で作ったチームだ。エースの岩隈らは、あえて理不尽な選手切り捨てに抗議の思いを込めて、勝ち馬に乗らないで、弱小楽天に入った。とても男気のある選択に感銘を受けたことを思い出す。
第6戦は、仙台に帰る。絶対的なエース田中が登板すれば、優勝の確率は相当に高くなる。創立9年目で日本一になれば、素晴らしい快挙となる。久米島からも応援が行くのではないか。
そんなこんなで、野球のだいご味が味わえる秋である。
追記
第6戦では不敗のエース・田中がついに敗れた。巨人が楽天に4対2で勝利し、三勝三敗で巨人が逆王手をかけた。まあ、ヒット数が巨人12本にたいし楽天3本と点数以上にその差は大きい。さほど調子がよいと思えない菅野投手を打てなさすぎた。
まあ予想通りになったのでは面白くない。最後まで何が起きるのかわからないところに、野球の醍醐味があるだろう。
追記
ついに楽天が球団創立9年目に日本一になった。プロ野球史上に残る快挙である。
6戦目に不敗のエース田中が4点を奪われ、敗れた。巨人にシリーズの流れが行きそうになったが、美馬ー則本ー田中のリレーで見事、巨人を完封して勝利した。
とくに、美馬の投球が光った。楽天の優勝の要因には、投手陣の頑張り=島捕手のリードを含めて=があるだろう。とくに、3番手の投手、巨人の杉内が2回の途中で打たれて降板したのと対照的に、楽天の3番手、美馬は、CSや日本シリーズを含めて1点も取られていないという快投だった。この3番手の差はそのままシリーズを左右したとも言えるだろう。
もちろん田中が、第6戦で160球を投げながら、7戦目もベンチ入りを志望し、9回には登板までする。その闘魂とでもいうのか、その姿はチームもファンも鼓舞した。田中が登板した9回表の、球場は異様な雰囲気、盛り上がりだった。
高校野球では、優勝旗は白河の関を越えて、東北に行ったことがない。プロ野球では、東北初の球団が優勝を手にしたことは、宮城をはじめ東北全体、被災者に勇気と希望を与えるものだ。
もちろん、沖縄のキャンプ地、久米島の人々もわがことのように喜んでいるだろう。
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