ボクネン美術館で版画を鑑賞する
沖縄で著名な版画家、名嘉睦稔(ナカボクネン)さんの作品を展示する「ボクネン美術館」を訪ねた。北谷町美浜のアメリカンビレッジにある。
美術館が入っている建物は「うねる赤瓦屋根」と呼ばれる「AKARA」。これもボクネン設計の建築だ。「アカラー」とは、「赤いもの」の意味がある。直線のない、すべて曲線。赤瓦が美しくうねっている。とてもユニークな建築物だ。2010年に開館した。
2階には、わざわざうねる赤瓦屋根を見る展望台がある。先だって、この建築が「琉球新報」の特集で紹介されていた。各地から見学者もあるそうだ。
1階は、アカラギャラリーがある。ボクネン作品の展示と販売、彼のデザインによるTシャツや著作、仲良しの照屋林賢のCDなどを販売するショップにもなっている。
ボクネンさんは、RBCラジオで番組を持っていて、よく聴いていた。風や波、草木や森など、日ごろ見慣れたような何気ない自然について、その豊かな感性で感じるままに語っていた。自然を愛し、そこからさまざまなインスピレーションやエネルギーももらっている感じがした。
しかも、彼は自分で三線を弾き歌う。それが、とても味わいがある。もうプロ顔負けの唄者だった。そんなこともあり、一度、美術館を訪ねようと思った。
ギャラリーでも、たくさんの版画が見られるが、せっかくなので2階の美術館に入った。
彼は、1953年、沖縄の伊是名島で生まれた。絵画、イラスト、デザインの仕事を経て版画と出会った。
展示室はあくまで、曲線を描いて広がっている。膨大な作品群に圧倒される。
「自由にならない不定線、一気呵成の彫り上げ着色。瞬間性の彫りと裏手彩色の技法は、森羅万象をテーマとする作品世界を怒涛のごとく押し広げた」(オフィシャルサイト)
展示されていたのは、この「万象連鎖シリーズ1、心のゆくえ」
写真撮影は、個々の作品はダメということで、看板のチラシから撮影したもの。版画の雰囲気がわかるのではないだろうか。
「万象連鎖シリーズ」は、1997年3月に彫られた最初の版画作品「一本道の福木」をスタートに、次々「繋ぎ絵」として生みだしていった作品群で、あしかけ17年におよぶという。
ボクネンさんは「ひらめくイメージをつかまえるためになるべくすばやく彫り込んでいくことを旨としている。ボクネン作品すべてに共通している」そうだ。
「作家が目に見えない世界を描くという試みがなされており、鑑賞者は摩訶不思議な世界へと誘われる」。
彼は、依頼されるテーマをもとに作品を制作することはほとんどない。作家にとって作品は「いただくもの」であり、決して「もぎとるもの」ではないとのこと。
版画を見ていても、彼の頭脳に浮かんだイメージを、時をおかずに一気に彫り上げた作品であることがよくわかる。色彩豊かで、勢いがすごい。情熱がほとばしっている。
版画も建築もともに楽しめる「摩訶不思議」な場所である。
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